Gタンパク質共役受容体(GPCR) などの膜タンパク質を、 生体内に近い状態で安定的に可溶化できる新規界面活性剤です。
医薬品の約60%以上が膜タンパク質をターゲットとしていると言われており、その構造や機能の解明は創薬研究において重要なテーマとなっています。現在はX線結晶解析が主流ですが、膜タンパク質の結晶化は容易ではなく、また結晶状態は必ずしも生体内での構造を反映しているとは限りません。膜タンパク質の構造やダイナミクスを生体内に近い条件で解析する方法として、高分解能NMRが注目されており、それに適した可溶化剤が求められています。
発明者らは、高分解能NMR構造解析に適した可溶化剤を新規に開発しました。本発明の可溶化剤は、生体内に近い構造・活性を保ちながらタンパク質を分離・可溶化することが可能です。
細胞膜の構成成分であるリン脂質分子をベースとしており、生体内に近い状態での膜タンパク質の単離および可溶化に適しています。
界面活性剤一層だけで膜タンパク質を取り囲む構造であり(図1)、ミセルの大きさ・分子量をNMRの測定限界以内に保つことが可能です。これにより、NMRでの動的構造の解析が可能になります。
高温でも、長期間安定に膜タンパク質を可溶化することができます(図2)。また、特に重要な創薬ターゲットとされているGPCRをはじめとした、多様な膜タンパク質への適用可能性が期待されます。
図1. 可溶化ミセルの構造
本発明は疎水性部を膜タンパク質側に、親 水性部を外側に向けた構造で膜タンパク質 を可溶化する。
図2. 可溶化したbRの安定
40℃で保持したところ、既存の可溶化剤では経時的にbRの変性が見られたが、本発明では10日間経っても変性ピークは見られなかった。
開発段階 | • 可溶化したバクテリオロプシン(bR)を40℃で10日間変性させずに保持できることを確認済み。 • bRのミセルの分子量が、NMR測定限界以内(約46kDa、直径5nm)であることを確認済み。 • NMRでbRの構造解析が可能であることを確認済み。 |
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希望の連携 | • 実施許諾契約 • オプション契約(技術検討のためのF/S) • 試料提供契約(有償) ※ 本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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