T細胞活性化に関わる分子のmRNAの分解を抑制することにより、細胞傷害性T細胞を賦活化し、抗腫瘍作用を増強することができます。
がん免疫治療法は、免疫チェックポイント阻害剤の開発により急速に進歩しましたが、治療が奏功する患者は未だに全体の30%程度にとどまっています。また、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を用いたがん免疫細胞療法は、血液がんの一部には著効し、臨床応用されていますが、固形がんに対する効果は不十分であり、更なる改良が求められています。
発明者らは、Regnase-1およびRegnase-3(Regnase-1/3 )による遺伝子XのmRNAの分解を抑制することにより、免疫細胞が賦活化され、がん細胞に対する傷害活性が増強されることを見出しました。
Regnase-1/3が標的とする遺伝子XのmRNAに存在するステムループ構造を破壊するアンチセンスオリゴ(本発明:X標的 -ASO )を開発しました(図A )。このX標的 -ASO導入後の各細胞障害性因子を産生する T 細胞の割合(図 B 上段)と各細胞障害性因子の発現量(図B下段)を確認したところ、X標的 -ASO導入T細胞は、IFNγとGranzyme-Bの発現量が優位に増加しました。
また、がん細胞株(B16-OVA) に対して、T細胞の数が1:1~1:16になるように培養して、細胞毒性を評価。X標的 -ASO導入T細胞の細胞毒性はcontrolよりも高く、用量依存的に上昇しました(図C )。
本発明によれば、表面抗原の刺激を介さずにX標的 -ASOを導入することで免疫細胞を賦活化することが可能です。近年、応答性が低下した免疫細胞においてPD1やIL-18R 等の表面抗原の低下が報告されています。本発明ではこれらの免疫細胞も賦活化できる可能性があり(図D )、CAR-T細胞療法や免疫チェックポイント阻害剤抵抗性の癌治療への応用が期待できます。
開発段階 | 新規標的遺伝子Xの特定のステムループ構造を破壊することにより、細胞傷害性T細胞の抗腫瘍作用が増強されることをin vitroで確認済み。 |
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希望の連携 | ・実施許諾契約 ・オプション契約 (技術検討のための F/S) ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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