溶融炭酸塩に金属イオンを酸化剤として添加することで、 環境に負荷をかけず、安全かつ効率的にタングステンを回収できます。
タングステンは、幅広い産業分野で利用される有用金属である一方で、原料生産が特定国に依存してしまう現状から、製品価格や生産体制の安定化のため、使用済みタングステンを効率よく回収しリサイクルする技術が求められています。
超硬合金などに使われる炭化タングステンのリサイクル技術の一つとして提案されているのが、溶融炭酸塩法です。溶融炭酸塩法は、環境負荷が大きい窒素酸化物(NOx)排出が問題となりうる溶融硝酸塩法とは異なり、有毒なNOxが発生しないことや発熱による爆発リスクがないこと、タングステンと他成分との分離性が良いことなど利点も多い一方で、酸化溶解反応速度が十分でなく、効率が非常に悪いという課題がありました。
発明者らは、溶融炭酸塩に酸化剤を添加することにより、安全かつ効率的にタングステンを回収する方法を見出しました。
具体的には、アルカリ金属炭酸塩(Na2CO3及びK2CO3の混合物)にCu+などの金属イオンを酸化剤として添加して炭化タングステン含有材料と反応(図1)させることにより、炭化タングステンの溶解を促進しつつ、溶融炭酸塩法従来の利点であるNOx不発生条件のもと、効率的にタングステンを回収することが可能となります。
溶融硝酸塩とは異なり、NOxが発生せず、爆発の可能性がない溶融炭酸塩法をベースとするため、安全にタングステンを回収することが可能です。
図2に示すように、金属酸化剤としてCu2Oを12.8mol%添加したときの反応は非常に高速であり、2.5hにおける単位時間当たりの溶解量は、添加無しの場合の約30倍となりました。
開発段階 | ・アルカリ金属炭酸塩(Na2CO3及びK2CO3の混合物)へ金属イオン(Cu2O)を12.8mol%添加しW含有材料と反応させた評価試験において、金属イオン無添加時に比して約30倍の処理効率を達成した。 ・実際の廃材を用いた実証を行い、実用検討いただける企業様を募集中。 |
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希望の連携 | ・特許ライセンス(※) ・共同研究(特許予約権付) ※京都大学から特許出願中です。 |
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