抗原への結合特異性を保ちつつ、結合解離を短時間に繰り返す抗体プローブです。
免疫染色やイムノアッセイといった免疫学的測定で使用される抗体プローブは、一般的に抗原に強く結合し、一旦結合した抗原と抗体プローブを解離させることは困難です。それに対し、発明者らは、抗原への高い結合特異性を保ちつつ結合解離を数分以内に繰り返す抗体プローブを蛍光標識し用いることにより、多重染色超高解像イメージングを行う方法(IRIS法)を開発しました。しかし、このような抗体プローブの取得には非常に手間がかかるという問題がありました。
発明者らは抗体プローブ中の一定の部位に変異を導入することで、抗原への結合特異性を保ったまま、結合解離の半減期を短縮できることを明らかにしました。
本発明の抗体プローブは、抗原に結合しても簡単にバッファーで洗い流すことが可能です(図1)。そのためサンプル上で操作1:抗体プローブのサンプルへのアプライ→操作2:イメージ取得→操作3:抗体プローブの洗浄という3つの操作を順次行うことにより、多重染色超解像イメージングが可能です(図2)。前記の操作を繰り返すだけですので、画像取得の自動化に適しています。
図1. 7重染色超解像イメージ取得の流れ
6種類の抗エピトープタグ抗体プローブとlifeact-GFPを順次用いてイメージングと洗浄を繰り返し7チャンネルの超解像画像を取得。
本発明の抗体プローブは結合解離を短時間に繰り返すため、従来の抗体プローブのように抗原に結合した抗体プローブによる立体障害が起こらず、従来法(PALM/STORM)よりも高い標識密度で抗原の分布イメージを取得可能です。
図2. IRIS法による培養神経細胞の四重染⾊超解像イメージング
(A)全体像。(B)神経シナプスの拡⼤像。前シナプスの⼩胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)、シナプス後肥厚内のアダプター分⼦Homerとそれを取り囲む豊富なアクチン線維が可視化されています。(C) Homer とVGLUT に対する新規高特異性低親和性抗体プローブが各シナプスで対象分⼦を標識した回数(シナプス10個の平均)は、各々の分⼦数近くまで到達していました。超解像顕微鏡では、標識密度が⼗分でないと正しい分⼦分布が画像化されません。
開発段階 | ・多様な抗体タイプ(Fv-clasp 、vHH抗体)で本技術の実証をしています。 ・6種類のエピトープタグに対する低親和性抗体プローブ(蛍光タンパクとの融合タンパクです。)が利用可能です。 |
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希望の連携 | • 実施許諾契約 • オプション契約 (技術検討のためのF/S) • MTA(抗体プローブ) ※本発明は京都大学から特許出願中です。 |
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