発明情報

白金系抗がん薬の効果予測方法

あるSNPの遺伝子型を調べることで簡易に薬効予測が行えます。

背景

 白金系抗がん薬は、がん治療においてファーストチョイスとされる中心的な薬剤ですが、末梢神経障害をはじめとする持続的でときには回復困難な副反応を生じます。それにもかかわらず、白金系抗がん薬が治療に有効でない患者が一定数あることも報告されていました。このため、白金系抗がん薬の治療効果を予め予測できれば、白金系抗がん薬が効かない患者にはじめから投与しないことが可能になります。そこで、白金系抗がん剤の治療効果の予測方法が望まれています。

発明概要と利点

 発明者らは、食道がん患者118名のコホートを対象として、白金系抗がん薬の治療効果と全ゲノム情報の相関関係を解析した結果、ヒトゲノム上で、がんとの関連が示唆されているPDX1遺伝子周辺に白金系抗がん薬の治療の奏効と高い相関関係を示す一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism、略してSNP)を特定しました。
 さらに、当該SNPと白金系抗がん薬使用患者の予後との相関関係は、バイオバンクジャパンに登録されている約26万人の日本人臨床ゲノム情報でも確認されました。

  • 簡易なSNP診断による予後予測

本発明によれば、あるSNPの遺伝子型を調べることで、白金系抗がん薬の治療効果予測ができます(図1,2)。

  • アジア系人種の約56が持つ遺伝子型について非奏効リスク群診断が可能

  • 末梢血液のゲノムDNA解析で予測可能

がん組織でなく血液で検査が可能なため、低侵襲性かつ簡便な検査が可能です。

図1.遺伝子型別の白金系抗がん薬治療の非奏効リスク
本発明のSNPの遺伝子型別に、胃がん患者における白金系抗がん薬治療が奏効しないリスクを比較したところ、遺伝子型Cを1とした場合、遺伝子型Aはリスクが0.123倍、遺伝子型Bは0.35倍であり、遺伝子型Aが最も治療効果が高く、遺伝子型Cが治療が奏効しないリスクが高いことが判りました。

図2.本発明のSNP遺伝子型による無増悪生存期間の解析
1次治療として白金系抗がん薬による治療が行われた食道がん患者118名において、無増悪生存期間を解析したところ、遺伝子型Cの患者群において最も治療効果が低いことがわかりました。

開発段階 バイオバンクジャパンに登録されている約26万人の日本人ゲノム情報において有意な相関を確認済み。
希望の連携 ・特許実施許諾契約
※本発明は、京都大学及び国立国際医療研究センターから特許出願中です。
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