ダークマター探索に向けた広帯域分光計の開発で生まれた広い同時帯域幅と高分解能を両立する独自の高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムです
高速フーリエ変換(FFT)は、離散フーリエ変換(DFT)を高速化したアルゴ リズムであり、様々な分野で入力信号のスペクトル解析に利用され、従来より高 速化、効率化、使用メモリを削減する様々な手法が提案されてきました。 宇宙物理学の重要な課題であるダークマター探索においては、電波や光を高分 解能かつ高効率に分光できる分光計、およびその核となるFFT演算の高性能化が 求められています。具体的には、数GHzの広帯域を同時に、数十kHzの高い周波 数分解能で分光できること、すなわち、分割点数「1×105」規模の膨大な入力デ ータを処理できるFFT技術が要求されます。これまでにGPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)上にFFTを実装 した例もありましたが、同時帯域幅、周波数分解能、データ処理の連続性の要求 性能すべてを満たすものはありませんでした。
本発明者らは、回転因子の指数法則に着目して少ないメモリと演算回路で実装できる回転演算回路を考案し、さらに回転因子行列の分割手法の工夫とを組み合わせたFFTアルゴリズムを開発し、FPGA上にFFT回路を構築しました。これにより、従来手法に比べ大幅にメモリを削減することができ、FFT処理の高速化を実現しました。
⮚ 従来手法より小規模な回路で実装可能
• 回転演算のためのメモリ使用量を1/8-1/16程度に削減可能
• FFT回路全体で、従来手法から乗算回数の増加を10%程度に抑えつつ、メモ リを20-40%程度削減可能
⮚ 広帯域・高分解能な分光を実現するFFT連続演算が可能
• 本FFTアルゴリズム搭載「dSpec」分光計で、12ビット幅 の入力を、帯域幅 4GHz、分解能31.25 kHz、デッドタイムなしで測定できることを実証
• FFT点の数Nが大きい広帯域かつ高分解能なスペクトル解析に有効
⮚ 汎用性の高いハードウェアFPGA上に実装可能
開発段階 | • TRL 4-5 • アルゴリズム確立 • 発明手法搭載の広帯域分 光計「dSpec」の開発 |
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発表状況 | • 第14回測定器開発優秀修士論文賞受賞・日本物理学会 • 第30回 ICEPPシンポジウム(2024.2) ◆知的財産 特許出願済 出願人:京都大学 |
希望の連携 | • 実施許諾契約(非独占) • オプション契約(非独占) |
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