心筋梗塞治療に効果の期待できる有効成分を明らかにしました。
現在、日本では心筋梗塞の症例が年間10万例弱認められています。ヒトの心臓組織が傷害後も修復可能となれば、心筋梗塞による死を激減させ得る可能性があり、心臓再生医療研究では現在、多能性幹細胞から誘導した心筋細胞や心臓様組織の移植が主流となっています。その一方で、より材料の調製が容易で患者への侵襲性が低い治療法の開発へとシフトしていくことは必定であり、心筋細胞の増殖を促進するような成分、又はその成分を含む培養物が見つかれば、培養した心筋細胞や心臓様組織を移植するよりも侵襲性が低い治療法となることが期待できます。
本発明は、治療に用いる可能性のある培養物として、一般に治療材料として製造する際、品質・効能等を一定に保ちにくいという欠点を有するエクソソームを含む細胞外小胞(extracellular vesicle:EV)から何が治療効果のある成分であるかを特定し、その成分をEV等の構成を模した手段により投与して、治療効果を発揮させる手法を目指したものです。本発明者らは、EV分泌阻害剤を用いた実験から細胞間の情報伝達現象のメカニズムを検討し、PKA-ESCsの分泌するEVが当該現象に関与し、特に当該現象誘導分子としてmiR-132が関与していることを明らかにしました。
miR-132を脂質ナノ粒子に封入してを疾患モデルマウスに投与したところ、心臓組織に送達され、心筋梗塞の縮小に寄与したことが示されました(下図)。
ヒトに対しても、miR-132を静脈注射や点滴などの形で臨床応用が可能であれば、心臓カテーテルが施行できない小規模医療施設でも心臓再生治療が可能となることが期待されます。
開発段階 | ・ヒト試料を用いたin vitro実験により効果確認 ・疾患モデルマウスを用いた動物実験により効果確認 |
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発表状況 | Journal of Extracellular Vesicles 2021; 10:e12147. https://isevjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jev2.12147 |
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